その37.不景気

最近、新聞を開くと必ず言っていいほど飛び込んでくる言葉、それは「削減」であったり、「解雇」であったり、さらには「赤字」「縮小」「倒産」などという文字である。世界的な金融危機により、円高、株安となり、日本経済が悪化衰退し、個人消費が低下した、ということであろう。一国の総理の立場にある人が、「百年に一度の不況」などと、現在の景気の落ち込みを煽るようなことを口にするから、ますます「不景気」の風が増幅されているようだ。

確かに、今はどちらを向いても景気のいい話は聞かない。世界的な消費の落ち込みと円高により、自動車や電機、半導体など輸出関連産業の、売り上げの低下と減益は大変な状況である。それにともなう社員の削減や、派遣労働者の解雇は、発表されているだけでも、膨大な数となっている。しかし、そうは言っても、「世界恐慌」の再来と言われるような状況に、今あるとは思えない。少なくとも、現時点では、街に路上生活者があふれているという状況でもないし、安い居酒屋に行けば仕事帰りのサラリーマンで一杯である。スーパーやコンビニ、デパートには、売れ行きは別にして、以前と変わりなく商品があふれている。

台風や地震の際によくあることであるが、被害の最も深刻な一部の地区の映像や写真を、テレビや新聞等で繰り返し見ると、その県や地域全体が大変な被害にあったような錯覚に陥るものである。国民全体が不景気を実態以上に意識してしまい、そのことがさらに不景気の風を煽っている、という側面も否定できまい。このような不景気ムードにあっても、順調に売り上げを伸ばしている業界もあろうし、逆風の中、落ち込みを最小限に抑えてがんばっている多くの企業も知るべきであろう。

花の業界もご多分に漏れず、世の不況の嵐の影響をまともに受けている。昨年から今年にかけて、おそらく全国の市場で売り上げのダウンという状況であろう。自動車等の輸出型製造業の減速により、広島の景気もよくない。当市場の年末の売れ行きは統計的には良いとは言えぬ数字となったが、洋ランなどギフト商品は、入荷多めにもかかわらず、極端な単価安になることなく、よく踏ん張ったと思う。売店筋に聞いてみると、「まあまあじゃたのう」という人もいるが、「高いもんは売れんよう」「仕入れを減らしたけえ、売り上げは落ちたのう」という声が多いようだ。当然ながら、売店の売れは市場に連動している。ある大型園芸店の社長はつぶやいた一「今年は厳しいかもしれん。しかし、今が最高のビジネスチャンスよ」

「不景気じゃいうて、落ちこんどっても、しょうがないよのう。こがいな時こそ、プラス思考でやっていかにゃあ」